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ルルーは国際宇宙飛行士の母に、私は父にこのロケットに乗せられてここまで飛び立った。他の人間は死んだよ。お前達だけでも生き残るんだ。そんな嘘に騙されたフリをして、一番最後に残った二人乗りのちいさなロケットに乗り込んだ。お父さんは?ママンは?私もルルーもそんなことを聞かなかった。
食料も水も、酸素も、何日分残っているのかは数えていない。
赤いベルトの腕時計がしゃぼん玉を殺害しながら自由にロケットの中を浮遊する。ルルーのプラチナが無機質な空間で異彩を放つ。
「ねぇルルー。泣くのはおよしよ。もう私とあなたしかいないのよ」
「アイは……アイは、哀しくないの、パパもママンも、いないのに」
「……」
私が特に返事をしないでいると、ルルーはまた子供のような嗚咽をこぼしながら泣き出す。私より五歳も年上のルルーが、小学生のような言動をし出したのはいつだろう。私はただただ冷めていってる。
私は宇宙に関する真実はたった一つしか知らない。宇宙に神はいなかった。
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