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私が彼らに出会ったのは、八つになったばかりのある日だった。母に連れられ山菜を採りに裏山へ入ったところ、私は母とはぐれてしまった。泣きながら母を探して歩いていた時、私は確かに人の形をしたものに躓いた。それが私と彼らの出会いだった。
「?」
思わず泣くのも忘れて躓いたものをそっと蹴ってみた。すると、低いうめき声が聞こえて、私はびっくりして固まってしまう。それが動かなかったので恐る恐る観察してみると男の人だと分かった。幼いながらも、かっこいいな、と思う顔だったので狭い里で今までに見かけたことがないとすぐに分かった。顔だけでなくとも、その人の髪は腰くらいの長さで色は白く、毛先には萌黄色が見える、初めて見る色で、しばらく見蕩れていた。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
見つめていると、不思議と恐怖が消えたのでそっと声をかけてみると、閉じられていた瞼がうっすらと開かれた。紅の瞳が、ゆっくりと私を捉える。それから少ししてその人が口を開いた。
「……近くに、黒い衣きたお兄さんいる?」
聞かれてすぐ辺りを見渡した。目を凝らすと、確かに何人か倒れていることに気付く。紅色の人、萌黄色の人、それと。
「あ、黒い衣」
「それ、起こしてもらえる?」
視界に真っ黒の羽衣の人が入り、口に出すと起こせと言われた。首を傾げるが、その人はもう顔を伏せている。そっと立ち上がって羽衣の人に近づくと、その顔面にお清めの御札が張り付いているのに気付いた。裏山に魔が立ち入らないようにと、数日前に里の大人たちが設置した罠だ。確か、足元に張ってある糸に躓いたら、御札が降ってくると言っていた。どんな仕掛けなのかは私には理解できなかったが。
この黒い羽衣の人は、それに躓いたのだろうか。ツンツンと体をつついてみるが、微動だにしない。おーい、と声をかけても反応はなかった。起こせと言われたが、そもそもこれは生きているのだろうか。どんな人なんだろうと思って、私は何気なしに顔の御札を引っペがした。
「……わぁっ!」
その途端、燃えるような熱さを感じたがそれは一瞬だけで手の中の御札は塵になってしまっていた。
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