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次に祖父の旧友である教授のもとに行くと、先生がまた来ていた。
僕は特に意識はしていなかったけど、先生の顔を見ると、いつもの無表情な顔を和らげていたようだ。
そんないつもとは違う変化を、教授は全く見逃していなかったようで、太い眼鏡フレームの上から覗き込むようにぎょろりと目玉を飛び出させて僕を見た。
痩せて骨張った神経質そうな教授は、瞬きすらせずに僕を見つめている。
ふと視線に気付いて何気なく教授の方を見た僕は、そんな教授とうっかり目が合ってしまった。
途端にビクリと固まるように体に力が入り、僕の視点は合わなくなる。
「私を気にしなくてよろしい。続けなさい……」
教授は口調を荒げることなく淡々とそう言ったが、僕の心は何も考えることなく、もうピシャリと閉ざしてしまったままだ。
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