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「水月くん……」
僕と教授を代わる代わる見ながら、先生は困ったように嘆息した。
「水月!今日はもう終わりだっ」
祖父の声が聞こえ、僕は反応するように立ち上がる。
「次だが……」
教授は諦めたように黒い大きめのスケジュール帳を出し、何やら二人でカレンダーを指でなぞり話し始めた。
「水月くん…水月くん……」
先生が小声で僕の耳元で話し出す。
「今度はもっとゆっくり、たくさんの時間話してくれる?」
会ったときと変わらず、先生は少年のような顔で最後に微笑んだ。
「……わかんない」
「そっかぁ……残念。さっきはすごく楽しかったから」
「『楽しかった』がわかんない……」
僕がそう言うと、話が済んだらしい祖父がやってきて僕の腕を掴み部屋を出た。
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