*:。 魚籠の水魚 ・゚:*:・'°☆

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ある日、いつものように祖父に無理矢理連れて行かれた先で、僕は先生と初めて出会った。 当時、まだ学生だった先生は、祖父の旧友である教授のもとで勉強していたんだ。 「やあ、初めまして。水月(みつき)くん。綺麗な名前だね」 そんなこと、今まで誰も言ってくれなかったから少し驚いた。 祖父の話だと、両親は僕が生まれる日で友人たちとお金を賭けていたんだ。 両親は月曜日と水曜日を賭けてたんだって。 なのに僕は火曜日に生まれてしまったから、悔し紛れに『月曜日と水曜日の間』と言う意味の名前を決めたらしい。 親が決めた名前は酷くて、読み方だって適当すぎたらしく、出生届を出しに行った祖母が、あまりに気の毒に思い押しとどまってくれたそうだ。 『その場で急遽“水月(みつき)”にした』と、祖父が腕を組んで足を揺らせ、苛立たしそうに教えてくれたのは、僕が4歳くらいに時だったかな? だから僕には、自分の名前に対する思い入れがなかった。
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