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「『水清ければ月宿る』……」
学生だった先生は、そんな驚いている僕の頭に手を置き、『よろしくね』と笑った。
「どういう意味?」
珍しく僕が興味を示した為、祖父は『こらっ……』と僕を制止した。
「水が澄んでいれば、月が綺麗に映る。 心にけがれがなければ、神仏の恵みがあるというたとえ………だったと思う。昔に読んだ本に載ってたのは、こんな意味だったと思うんだけど、我が記憶ながら自信ないなあ。えへへ、違ってたらごめんね」
ちょっと体を屈めて僕の目を見てから舌をペロリと出す先生は、僕よりずっと年上の大人のはずなのに、そんなに年上に見えない。
「ううん……ありがとう…」
初めて僕の名前を褒めてくれた。
祖父は不機嫌そうな顔をしたけど、僕は見てない振りをしたんだ。
だって、初めて僕のことを誰かが気づいてくれた気がして……
嬉しかったんだ……
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