8人が本棚に入れています
本棚に追加
僕は祖父とのお出掛けが、いつも苦痛だった。
行ったところで、僕は何も楽しくはないし、祖父たちの髪につけている油みたいなのがてらてらと光って、それがまるで蛇の鱗ように見えて嫌だった。
それに、油の独特の臭い……
なんであれを好んでつけるのかわからなかった。
仕方無いからなるべく息を止めて、ただ黙ってることにしたんだ。
そうしてると、案外時間なんてすぐに過ぎているから、いつしか無意識に何も考えないようにしていた。
今から思えば先生と出会った頃は、たぶんそんな何も考えてない頃だ。
何を聞かれても、何をもらっても反応がほとんどない頃で、毎度ただ終始ほとんど無言のまま、行って帰るだけだった。
誰かに何かを聞かれれば、僕は促されぼんやりしながら祖父の手前答えはする……
聞かれること以外、僕から話すことなんて何もなかった。
最初のコメントを投稿しよう!