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けれども、今回の先生と会話する僕はいつもと違っていたようだ。
だから、祖父の旧友は意外そうな顔をしながらも、僕と先生の様子を興味深く見ていたんだ。
僕の方は興味もないそんな祖父の旧友を観察していたわけでもなく、視線すら向けてもいないのだから、見られていることなど帰りに祖父に言われるまで気づくことはなかったんだけれど。
「楽しかったのか?」
祖父はいつもの不機嫌そうな顔で訊ねてきた。
「……わかんない」
「楽しそうに見えたがな」
「“楽しい”がわかんないから……わかんない……」
僕がそう言うと、祖父は興醒めしたのか『ふんっ……』と一度鼻で笑っただけだった。
でも祖父には言わなかったけれど、僕はまた会えることを望んでいたから、“楽しかった”のかもしれない。
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