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「もう二度としないで。優依ちゃん達にも近づかないで。優依ちゃんがどれだけ苦しんだか君たちにはわからないでしょ。僕がどれだけ後悔したかも。
……お前らの軽率な行動のせいで、僕達は大切な仲間を失いかけた。友達を傷つけた……!それでも優依ちゃんは、許してくれるんだって……!僕達の事も、お前らのことも……っ
優依ちゃんは優しいからさぁ!」
茜の目から涙がこぼれ落ちる。
彼も相当苦しんだのだろう。
まんまと罠にかかって、優依を散々罵ったから。
彼女達を叱っているようで、自分を責めているように見えた。
「茜。俺も優依に謝りたいんだ。どこにいるか教えてくれ」
「……この中。朝早くからずっと……ううん、日が昇る前からずっと、いるみたい」
茜の言葉に、海斗は自治会室の扉を見据える。
扉の前に立ち、ゆっくりとドアノブに手をかけた。
いつもより重く感じる扉を押し開けると、そこに彼女はいた。
部屋いっぱいに布や裁縫道具を広げて、その中心で寝息をたてていた。
ボロボロだった衣装は手直しされ、元通りとは言わないまでも形が出来上がり、傍らには未完成だった看板まで色か塗られてたてかけてある。
彼女なりに、何とかしようとしたのだろう。
海斗は近くにあったタオルケットを手に取り、優依の背中にかけた。
謝るのは、後にしよう。
今は、他にやることがある。
海斗は用意していた出店停止の申請書をシュレッダーにかけ、役員共同利用のパソコンをひらいた。
デスクトップからイラスト作成ソフトを立ち上げ、手際よく作業を進めていった。
記憶を掘り出しながら、ペンタブレットで線を描いていく。
迷っている暇はない。
本番まで、あと3日。
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