神さまあんまりだ

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「悪いが通して貰う」 3人が話をしていると、長い行列をかき分けて今度は黒いスーツに身を包んだサングラスの男が2人入ってきた。 どよ、と空気が揺れる中、男達は表情一つ崩さず優依達に顔を向けた。 「柿原茜殿はおられるか」 「あの……皆様列に並んで順番を待っていますので、最後尾へお並びください」 異様な雰囲気を醸し出す男達に緊張しながらも、優依は勇気を振り絞って声をかける。 サングラス越しで目は見えないが、一瞬睨まれた気がした。 「柿原殿はおられるかと聞いている」 「ですから……っ」 「やめなさい、兵頭、白石。周りの方々が怯えているでしょう」 彼らの後ろから凛とした声が聞こえた。 2人が退くと、素人でもわかる高級な衣服を身にまとった可憐な少女が立っていた。 どこかで見たことのある女性。 それも最近。 どこで見たんだっけ、と優依が考えていたのも束の間。 女性客と会話を楽しんでいた茜が急に立ち上がり、声を上げた。 「マイハニー真季乃!来てくれたんだね、待ってたよ! やっぱり君がいないと、景色が華やかじゃない」 豹変した茜を見て、合点が行く。 彼女は三大財閥の一つ、神崎財閥ご令嬢の神崎真季乃。 先月ハワイで茜との婚姻を結んだ、柿原財閥次期当主夫人だ。 呆気に取られる周りの客を尻目に、茜はさあさあ座ってと彼女を席に案内する。 だが、不正は黙って見ていられない人に流されたくないザ・田舎者 李木優依。 国内最高権力者ということも忘れて、茜を睨みつけた。 「駄目ですよ茜さん。身分がどうであろうと順番は順番。みんなで文化祭を楽しむためにも、この店のルールには従って貰いますっ」 「えー」 「えーじゃありません!」 むーと唇を突き出す茜。 しばし考え込んだあと、ぱっと笑みを浮かべて優依を見上げた。 「じゃあ僕、真季乃と他の店をまわってくるよ」 「え?」 「視察も兼ねて行ってくるから、午後からの学生自治会役員の巡回はなしで。午後は自由行動でいいよ。あ、君達も帰っていいよ。真季乃は僕が守るから。じゃあね」 「え、茜さん?あの、」 反論を返す前に茜は真季乃の手を引き、優依達とSP2人に手を振って出ていってしまった。 まだ何か言いたげに入口を見つめる優依の肩を、健がぽん、と叩いた。 「諦めろ。あの人はああいう人だ」
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