神さまあんまりだ

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「よし、午前の部はこれで終わりだな」 最後の客が会計を済ませて帰ると、海斗はぐんと背伸びをした。 他のブースはまだ稼働しているが、学生自治会だけは午後から他のブースで不正がないか視察に入るため、ブースは午前の部で閉めることが決められている。 「お疲れ様。海斗さん、ウェイターも調理もだったから忙しかったでしょう」 食器を片付けながら、衣音が微笑む。 海斗はため息を吐きながら凝り固まった首をほぐすように回した。 「全くだ。やはりウェイターなど引き受けず調理に専念すればよかった」 「駄目ですよ。海斗さんを目当てに来る人がいるんだから」 「途中から茜が抜けたせいで余計忙しくなった。あとで文句を言ってやる。 ……まぁ、そのおかげで午後の時間が空いたんだが」 「あの、海斗さん。気になってるブースがあって」 「あぁ、じゃあ一緒に行くか」 客が居なくなって気が抜けたのか、早くもラブモード全開な衣音と海斗。 優依は呆れ顔で視線を送ってくる健の目配せに頷いた。 「海斗さんと衣音ちゃん、先に行っていいですよ。後の片付けは私達やっておくんで」 「え?でも……」 「いいのいいの。海斗さんは私たちの2倍頑張ってくれたし、衣音ちゃんもクレーム対応してくれて助かったから」 「それじゃあ……お言葉に甘えて」 衣音は申し訳なさそうにしながらもどこか嬉しそうに、海斗と優依を交互に見つめた。 海斗も、今日の夕食は奮発しよう、と言葉を残し、衣音を連れて出ていった。 さて、後片付けを始めるか、と健が切り出したその時。 室内のスピーカーがザラザラと雑音をたてた。 『学生の呼び出しを致します。イラスト学科1年、李木優依さん。至急放送室まで来てください』 放送委員の急な呼び出しに戸惑いながら、健を見つめる。 彼女は行ってこい、と入口を指した。 「すみません。すぐに戻ります」 「あー、いいよ。そのままブースまわってきな。 私は特に予定がある訳じゃないし、片付けなら1人でもできる」 にっと笑う彼女に頭を下げて、優依は放送室へ向かった。
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