神さまあんまりだ

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「千秋と晴香に連れ出されたんだ。優依のメイド服が見れるって言うから着いてきてみたら、あいつらどっか行くしスマホの充電切れるしお前はメイド服じゃねぇし。もっと足を出せ、こんな時くらい胸を強調しろ」 「いいんですか、露出増やして」 「いい訳ねぇだろ馬鹿かてめぇは」 まだテンパっているのか、言っていることがめちゃくちゃだ。 優依は拓海を人気のない中庭のベンチに座らせ、その隣に腰を下ろした。 「っていうか、人混みなら今までだって見たじゃないですか。花火大会とか、ハワイとか」 「馬鹿だなぁてめぇは。あれは近くにてめぇとか海斗とかいたから平気だったんだよ。独りで人混みとか……っ、地獄だ。拷問だ。公開処刑だ」 「いちいちばかばか言わないでください帰りますよ」 「ふざけんな帰ったら別れる。てめぇのこと嫌いになる」 発言がどれも子どものようで、優依は空を眺めて息を吐いた。 普段引きこもりで人混みを目にしない彼にとって、それはかなりの恐怖らしい。 その証拠に人混みから離れた今も、自分を守るようにパーカーのフードで頭をすっぽり覆っている。 「俺は、帰る。楽しくない。優依、俺を家まで送ってけ」 「まだ文化祭の途中です。役員は閉会式終わるまで居なきゃいけないんです。帰るなら1人で帰ってください」 「てめ……っ、また俺をあの拷問刑場に放り出そうと……っ」 はっと顔を上げた拓海は心底絶望に満ちた顔を優依に晒した。 ぐぬぬ、と唇を噛み、しばらく時間を空けてから妥協するかのようにため息をつく。 「……分かった。優依が閉会式終わるまで一緒にいる」 「あの、念の為言っときますけど、閉会式の後一般入場のお客様は帰っていただいて、学生は後片付けですからね?」 また、絶望に満ちた顔。 子守というのは、なかなか疲れるものだ。 「じゃあ、閉会式までは一緒にいてくれていいです。その後は千秋さん達と帰ってくださいね」 「優依、俺のこと嫌いなのかよ」 「後片付けが終わったらすぐに帰りますから……!」 彼と付き合い始めて、ひとつ分かったことがある。 彼は、拗ねると厄介だ。 普段のかっこいい拓海はどこへやら。 それさえも可愛いと思えてしまう自分に、優依は呆れて何度目か分からないため息を吐き出した。
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