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「……私、拓海さんと付き合ってて長生きできる自信ないです」
「俺を死神かなんかみてぇに言うな」
一通り優依をからかって気が済んだのか、拓海は優依の隣でフェンスに寄りかかり、ペットボトルのお茶を飲みながら笑った。
優依も拓海と並んでフェンスに体を預ける。
昼時を過ぎると、少しずつだが屋外ブースは落ち着き始めた。
何気なく下を見下ろしていると、見覚えのある影を校門に見つけた。
遠くからで見えずらいが、人影はブースには目もくれず、まっすぐどこかに向かって歩いていく。
その姿が妙に気になり、動向を目で追っていた優依だが、ゴールを見届ける前に拓海に声をかけられた。
「あのさ」
「はい?」
「……小説、もうすぐ完成しそうなんだ。新しく書いてたやつ。
最初に見せる約束だったろ」
「あ、そう言えば。楽しみです」
「今までは自費出版だったんだけど、今回は……出版社に持ち込んでみようと思うんだ。
そんで……優依に許可とってなかったな、と、思って」
「許可?」
先刻までの余裕はどこへやら。
視線をさまよわせながら、やっと見つけたように優依を見つめて。
拓海は口を開いた。
「今回の話は、田舎から上京してきた少女が、周りにいる心を閉ざした奴らの心を開いていくって話、なんだけど。モデル……優依だからさ。脚色はしてるけど、事実とかいくつか混ぜちまってんだ」
一瞬驚いた顔をした優依の表情は、ふわりと柔らかくなり、無邪気な笑顔が浮かんだ。
「拓海さんの小説に、それも主人公として登場できるなんて。夢みたいです」
「……そか。よかった」
自分が主人公の本が世に出回るなんて、なんて素敵なことだろう、と胸を踊らせながら、
優依が振り向いた先に、先程の人影はなくなっていた。
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