神さまあんまりだ

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「よし、終わったー……」 一人会場の片付けを終えた健は、ぐ、と背伸びをした。 優依はすぐに帰ってくると言っていたが、戻って来ないのを見ると、大方呼び出された原因は海で会った気ままなルームメイトだろう。 自分以外の役員メンバーは一人残らず、今頃大切な誰かと学園祭を楽しんでいるに違いない。 「あーくっそ、私の周りリア充ばっかかよ」 腹立たしい気持ちを声にして発散しようとしたが、返ってくるのは虚しくも室内に響いた自分の声だけだ。 さて、このあとどうしようか。 特に予定もない健は、優依と二人で学園祭をまわるつもりでいたが、完全に一人放り出された。 一人でブースをまわっても面白くないし、と悩む健。 だが、こんな空き部屋で一人佇んでいても仕方ない。 とりあえず腹ごしらえをしようと、屋外ブースへ足を向けた。 「お姉さん、一人?」 階段を下りる途中、2人組の男に出会った。 髪は茶髪、両耳にピアスを2つづつぶら下げた、いわゆる“チャラ男”ってやつ。 「俺達とブースまわろうよ」 「あ、っていうかここの学生?案内してよ。俺達迷っちゃってさー」 あからさまなナンパの言葉に、健は思わずため息をもらす。 ことを荒らげないよう、やんわりと断るのがいいのだろうが、生憎健にそんな器用さはない。 男の子が欲しかった両親に男のような名前をつけられ男のように育てられてきた。 故に言いたいことははっきり言う、という奥ゆかしさの欠けらも無い癖が身についてしまったのだ。 「あんたらさぁ。名門芸術大学に来て他にやることないの? ナンパしないと女を引っ掛けられない男ってつまんない」 「あぁ?」 「芸術大学の学園祭はただの学園祭じゃねぇんだよ。ナンパする暇があるなら絵画の一つでも学んで帰れ。あんたらみたいなのがいると他の客に迷惑だ」 「てめぇ女だと思って調子乗ってんじゃねぇぞ!」 「……!」 これまで、自分の性格を恨んできたことは多々ある。 今回も例に漏れず、健はたった今吐いた言葉を後悔した。 だが撤回するには遅く、健の足は既に狭い足場を離れていた。 「(落ちる……っ)」 ぎゅっと目を瞑り、衝撃に備える。 しかしいくら待っても、痛みは襲って来なかった。 ただ、ぽす、と小さな音が聞こえただけだ。 それと、知っている匂いが鼻を擽った。
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