神さまあんまりだ

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「お前、また見てんの?」 昼食の時間になると、食堂は人が溢れかえる。 そんな中でも彼女はいつも、不思議と視界に止まった。 「おー」 からかい口調の友人の声も聞き流しながら、一人で食事を摂る彼女を見つめる。 こうして彼女を見つめるようになったのは、いつからだっけ。 悪いことは絶対許さない。 まっすぐ悪に立ち向かう、まるで戦隊モノのヒロインみたいな彼女を、自然と目が追うようになっていた。 こういうのを世間では、一目惚れと言うらしい。 けど、俺は彼女の事をほとんど知らない。 知っているのは、彼女の名前が秋田健という事と、彼女が学生自治会の役員だということ。 あとは、 「好きなら告白すりゃいいのに」 「……答えがわかってるのに?」 あとは、彼女が同じ自治会の副会長に恋をしていると言うこと。 噂が立っている訳じゃないし、誰かから聞いたわけでもないけど、見ていればわかる。 分かるように、なってしまった。 副会長と一緒にいる時だけ、笑顔の質が違う。 それはそれは嬉しそうに、幸せそうに笑うんだ。 「でもさ、真叶も変わってるよな。アレのどこがいいんだか」 「わかる。ガサツだし、女らしさの欠けらも無いっていうか」 同じテーブルに腰を下ろした友人は好き勝手に彼女を笑う。 こいつらは分かってない。 女らしさとか、女子力とか。 そんな言葉では片付けられない、彼女の魅力を。 例えば彼女が清純派女子とか、アイドル系とかだったら、たぶん俺は好きになって無かった。 彼女が強くて勇敢で、人の幸せを第一に考える優しい“秋田健”だから、 俺は惚れたんだ。 「女だと思って軽く見てんじゃねぇぞ」 そう、彼女は強くて。 自分より体の大きな男を数人同時に相手するくらい、勇敢で。 「怪我したくなかったら、2度とうちの後輩に手ぇ出すんじゃねぇ。 こっちは会長が邪魔なSPにキャンパス内歩かせない為に会長のお守りもやってるんで。 空手黒帯をなめんな」 「(かっこいい……)」 そんな彼女に俺は夢中で、 でも、届かないことも、ちゃんと知ってる。
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