一.苦渋を舐めし一族

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ー私立 妙院(みょういん)高校ー ジュワ、 「イデデッ!!」 「もうっ、動かないでよミョージン。」 「でも、染みるんだもんよ。」 学校の保健室。ミョージンは、消毒液を染み込ませたタンポンが目頭に当てられ、悶絶苦闘する。 紹介が遅れた、少年の名は【名神 一真】《みょうじん かずま》。ここ、妙院高校に通う高校2年生である。 黒髪黒目、顔も体躯も平々凡々。特筆すべきと言えば、やはり‘‘珍しい名前”位だろう。 タンポンが、また名神の顔に接近する。 「ほいっ。」 「イデデデッ!!テメェわざとやってんだろ!?」 「違うよ~!ちゃんと消毒しないと、ミョージン化膿しちゃうよ?」 名神の傷を丹念に消毒してくれているのは、【橋本 円華】《はしもと まどか》。短く切り揃えられた黒髪、そして明るめの茶色の瞳は快活な印象を受ける。 「まーた喧嘩したんでしょ~?」 「違っげーーよ!…ぁ、アレだ!通学路の途中に、デッケー秋田犬が出たんだ!格闘してたら怪我したっ!!」 「…3組の‘‘野村”達がボコボコになってたけど?ミョージンがやったんじゃないの?」 「違ぇーーよ!!そんなん知るか!!」 名神は、嘘を吐く時には声が大きくなる。円華はそれを知っていた。
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