第1章 登校

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だがすぐに立ち直り、敵を見据えて意識を集中する。 突き出した右手の前に霊子が凝縮されていき、見る見る球状になっていく。 「塵となり消え失せなさい!」 言葉とともに放たれたボールは音速を超えて馬らしきものの胸元あたりに一気に迫る。見事に当たったその瞬間、弾け飛びゼーレエッサー共々、木っ端微塵に大気中に飛散した。 それと同時に、地上からも爆発音が伝わってきた。 事の重大さを思い知らされた2人は放心状態に陥ってしまったが、突如背後から掛けられた声で強制的に現実に引き戻された。 「なぜこのような事になったのか、説明は後で聞く事にする。2人はここで待機していろ」 背格好の1回りは大きい男の神の出現に、硬直して振り向けもしないケインとエリス。 消されてしまうのではないかと思うほどの恐怖が背筋を駆け上る。 「返事は?」 「「はいぃっ!?」」 裏返って何の鳴き声かと思うほどの返事に思わず苦笑してしまった男は、努めて威圧感たっぷりに言い放った。 「ばかか、お前らは!」 そのまま地上に降りていく様子を、2人は微動だにせず見つめていた。 「いやー、しかし、こりゃ参ったねぇー」 地上の有様を目の当たりにし、自分の部下の失態を嘆かわしく思った男だったが、一刻の猶予もない事態なので早速作業に取りかかる。 霊子を用いて空間に存在する物質の再構成を行い、爆発前の状態に戻すのである。 物ならすぐに直せるのだが、こと生物となるとそう容易くはいかない。 生物の死後、その身体から魂が抜けていくのだが、ある程度肉体から離れてしまうと、生前の情報を全て失い無垢の魂となってしまう。 よって、ある程度時間が経過してしまうと、死者を復元できる望みは非常に薄くなる。 そう、この少女(楓)のような場合には。
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