3人が本棚に入れています
本棚に追加
「待て、少年。彼女はまだ存在できる」
神の声のように聞こえた。
「……助かるのか?本当にっ!」
神にお願いするように、俺は心から男に言った。
「お願いします、楓を助けてください!」
大きく頷いて了承すると、男は楓に近寄り片手をかざした。
だが、その手は身体ではなく、その上空に向けられている。
「汝が魂よ、いま一度の転生を認めよう。ブライアンの名の下にっ!」
楓の身体が浮き上がり淡い暖色の光に包まれる。
その刹那の後に、ゆっくりと重力の影響を無視して、俺の腕の中に楓が降りてきた。
驚いた事に、その身体は完璧に爆発前の状態に戻っていた。
だが一向に目を覚ます気配はない。
……そうだ、男は『存在できる』と言ったんだ。
生き返るとは言ってなかった。
期待した俺が馬鹿だった。
そうだよな、助かるわけなんかないよな。
諦めに肩を落とし、空を見上げたまま動けない。
そこに楓の姿を見ているかのように。
「おい、少年。最後の仕上げを頼む」
「……え?……仕上げって?」
まだ終わってない?
本当に助かるのか?
しっかりしろと、気付けに頭を大きく振る。
今助けてやるからな。
「おれに出来る事は何でもします。いったい何をすれば?」
「ああ、簡単な事だ。口づけをしてくれ」
最初のコメントを投稿しよう!