第1章 登校

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なるほど簡単なことだ。 口づけ、接吻、つまりキス。 お互いの唇を接触させるだけの行為。 そんなこと1秒もあればできてしまう。 「…………」 できてしまう…………。 「どうした?早くしたらどうだ?制限時間はないが、はやく息を吹き返して欲しいのだろう?」 確かにその通りだ、早く話したい。 楓の声を聞きたい。 ええいっ、ままよ! これがファーストキスだったらすまない! 助けるためなんだ。 あぁそうだ、俺が言わなければ良いだけの話じゃないか。 お前の経歴に傷を付けるような事はしないよ、楓。 …………してるけど。 楓の唇に自分の唇を近づけていく。 えっと、ちょっと顔を斜めにするんだよな、鼻当たるもんな。 あと数センチ、目を瞑ってそのまま最後までいく。 冷たかった。 こんなファーストキス、経験する人なんて絶対いないだろう。 大事な人の命のかかったキス。 最高のファーストキスだよ。 「んんっ」 楓が目を覚ましたのに気付き、反射的に顔を遠ざける。 「……あれ?ゆうくん?」 寝惚け眼をこすりながら状況が分からないという様子で楓が尋ねてくる。 「なんで抱っこ?」 「あぁー、これか?……なんとなく」 「そっか、なんとなくかー。なかなかに気持ち良いぞ」 なんとなくで収まるあたり、単純って最高だと思う。 ほんと子どもだなぁ。
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