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体育館から教室に移動する前に、昇降口に貼り出されたクラス分けの名簿に目を通し自分の教室を確認する。
自分の名前に続いて載っていた白木の名前も視界にとらえ、恐らくこうなるであろうという予想が的中した事も確認した。
小、中とずっと同じクラスだったし、当たり前になっていることかもしれない。
新入生の波に乗って先ほど確認した1年1組のクラスに流れ着いた。
ドアは開け放たれ来るもの拒まずのスタイルに、新境地への第1歩は意外とすんなり踏み出せた。
教室内を見渡してみると、既にいくつかの島が出来ている様子だ。
同じ中学校からの友人や、小学校の頃の友人と既にグループを作っているのだろう。
これが最も安全で簡単な処世法である事は世の中の常識として間違ってはいない。
とかく、俺もその流れに乗ろうと見知った友人の姿を探して視線を彷徨わせてみるが……いない?
見知っている人間が全くいないというのは、これいかに。
まずい、初っ端から孤立してしまうことだけは避けなければならない。
いや待て、いることはいるではないか。
必死に幼なじみの姿を見つけ出し、視線を合わせて相手の出方を伺う。
楓のことだ、きっと駆け寄って来てくれるに違いない。
そう信じて、すがりつく思いでその瞳を見つめる。
向こうも友達とおしゃべりしながらこちらを見つめ返してくる。
しばらく、といっても数秒のはずだが、そんな2人のやり取りは期せず形で終わりを迎えた。
楓の口の端が少し引き上げられ、ニヤリとした笑みが浮かべられたのだ。
そんなに利口そうな表情をしてはいけない、お前はそんなキャラではないはずだ。
心の中で叫ぶが、この声は届くことはなかった。
一瞬浮かべられたその表情は、友達に向き直った際には元通りの笑顔に戻り、楓はそのまま楽しそうに談笑している。
その様子を呆然と眺めることしか出来ず、担任教師が入ってくるまでその場に立ち尽くしていた。
俺と楓の立場が逆転した瞬間であった。
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