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「ごめんってー、ゆうくーん」
ニコニコしながら謝ってくる楓が、抵抗できずに机に突っ伏した状態の俺を左右に揺さぶってくる。
屈辱的な状況ではあるが、幸いにも自己紹介の後に何人か男子生徒と会話を交わし、繋がりを作ることには成功していた。
「でも面白かったなー。あんな顔するんだもん。こんな感じだったかなぁ」
呆然とした表情を作っているであろう楓の顔を、ついちらりと見てしまう。
いつもなら笑えるはずのこの間抜け面、対象が俺なだけでこんなにも
状況が変わるとは。
なぜ楓の友人はあんなに多いのに、俺の知り合いは1人もいないんだ!
…………この悔しさ、晴らさでおくべきか。
どうやっていじめてやろうか、もとい、仕返しをしてやろうか考え込んでいると、
「黒田くん……で合ってる?」
その透き通った風鈴のように耳の奥まで響いてくる声に、それまでの灰色に淀んだ感情が一気に晴らされていく。
反射的に声のした方、机の右側に立っている女生徒に面を向けた。
長髪が腰の辺りまで伸び、手入れの行き届いたその艶やかな流線ですら目を引くに十分であるのに加え、目鼻形の整った様は凛々しくも控えめな和風美を醸し出していた。
背丈は楓より少し高いぐらいだろうか、2人を比べるとだいぶ成熟度に差があるというか、精神年齢の違いが見た目から伝わってくる。
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