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「…………」
その凛とした美しさに見とれて声も出せないでいると、足のスネを思いっきり蹴られた。
「いった!!」
苦痛に顔を歪め、スネをさすりながら前に向き直ると、頬を思いっきり膨らませた楓の顔が出迎えてくれた。
「なんで蹴るんだよ!」
「別に、たまたま足が当たっただけだもん」
その拗ねたような言い方に、頭にひらめくものがあった。
先ほど俺を虚仮にしたことへの仕返しに持って来いのこの状況。
絶対にこの和風美少女と仲良くなってやる。
何事もなかったかのように、隣に立つ美少女に顔を向けてから尋ねる。
「どうかしたの?」
この返しで合っているのかは分からないが、間違いではないはずだ。
女の子と話した事なんてほとんど無いんだから、良い文句が浮かばないのもしょうがない。
「実は、相談があるんだけど」
俺の心配をよそに、話は良い方向へ向かっていきそうである。
「どの部活に入るかもう決めた?」
「いや、まだだけど」
「天文部に入らない?」
「天文部?」
なぜ天文部なのか、この時は深く考えずに返事をしていた。
「……うん、別に良いけど」
そう答えるや否や、別の角度からも肯定の返事が返ってきた。
「私も入る!」
「よろしくね、2人とも!」
お前もかっ!という突っ込みを入れる前に話が進んでしまい、その素早い切り返しに驚かされたが、まぁ良いかと流す事にする。
なんだかんだで楓がいた方が楽しいに決まってるからな。
良かった、と胸を撫で下ろす女の子に、ふと気になっていた事を聞く。
「そういえば、君の名前は?」
「あぁ、そうね。まだ言ってなかった。ごめんね」
少し背筋を伸ばし姿勢を良くしてから言い直そうとする姿に、見上げる形で少女を見ていた俺は視線のやり場に困ってしまった。
控えめだと思っていた双丘が間近で強調され、その存在を主張し始めたのだ。
思わず見入ってしまう自分が情けない。
それに気づいたのか、横の方から鋭い視線が突き刺さる。
これはどう考えても不可抗力だろう?
どこを見ようか逡巡していると、そんなことお構いなしに、その透明な声で告げられた。
「私は、赤音鈴(あかね りん)。2年生で天文部に入ってるの」
俺と楓は顔を見合わせてしまった。
…………先輩だったのね。
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