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「ここが天文部の部室よ、さぁ、どうぞ入って」
先輩に連れられるまま自分たちの教室を後にし、一旦教室の集まった校舎を出てから、その隣に位置する別の校舎へと案内された。
部活専用に建てられたという3階建ての部室棟。
その外壁は茶色に変色し、所々ちょっとしたヒビが入っていたりする。
これはそろそろ行政から指導が入りそうなレベルだ。
すでに入っているかもしれないが、在学中に改修が行われるのはまず避けられないことだろうな。
手すりがグラグラと今にも倒れそうな階段を上り、3階の一番隅っこに位置する部屋の前にたどり着いた。
天文部という色あせたネームプレートと少しくたびれたドアに不安を覚えながらも、ゆっくりと中に入って行く。
目の前に広がった空間は……。
「あれ、……ふつうだ」
「思ったよりきれいだねぇ」
隅のほうにはクモの巣が張っていて、机も椅子もガタガタな部屋を想像していたのに、それとは対照的に天文部の部室はきれいで快適な空間をその内に秘めていたのだ。
真っ白な壁に、中身のぎっしり詰まった本棚が立ち並び、中央には長机がコの字に並べられ、椅子もパイプではなくクッション性のある高さ調節機能付き回転椅子である。
さらに、奥の窓際にある部長のデスクと思われる所にはデスクトップパソコンが置かれ、できる人のオフィスを思わせる。
隅の方にはソファが置かれていて仮眠がとれそうなくらいゆったりでふかふかしてそうだ。
上の方に視線を向けると、快適な生活には欠かせない空調設備が目に入り、天井の照明器具も蛍光灯ではなくLED照明であるらしい。
エアコンが備え付けられていることで生活空間としての評価は鰻登りである。
シャワールームでもあれば普通に暮らせるな、ここ。
そんなことまで考えてしまうほど、部室の外見と内面は不釣り合いであった。
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