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その日の夜は最後の晩餐と言う事で莉乃はご馳走を用意した。
二人で美味しく食べると風呂へ入り最後の夫婦の交わりを康介が求めて来た。
謝罪の意味もあったのだろう。
あえて莉乃は、嬉しそうな顔を見せる。
そして事が済んだ後莉乃は、康介の為にコーヒーを入れる。
ジギタリス入りのあの世に近い美味しいコーヒーを入れて康介に手渡す。
「さあ、康介、これを飲んでくれたら私のお願いはもう終わりよ」と冷ややかな瞳で微笑む。
康介は、
「ああ、分かった。頂くよ。莉乃、ごめんな」と呟くと一気にジギタリス入りのコーヒーを飲み干す。
その様子を見ていた莉乃は、おかしくてたまらなくなった。
そして、高笑いを始めていた。
莉乃の高笑いをしている足元で康介は胸をかきむしりながら、身もだえている。
あまりの苦しさに声が出ない。
目は血走り顔は死の恐怖におびえながら、息も絶え絶えになり、最後のちからをだして左手で莉乃の足を掴もうとした。
だが手は宙を掴んだだけだった。
やがて、口から泡を吐き目を向いて息絶えた。
莉乃は目の前の夫の苦痛に歪んだ死に顔を見て何とも言えない恍惚感を味わっていた。
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