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黙ってしまった弟子に、ミランダは努めて穏やかに問う。
「理由は他にもあるわよね?」
「……………」
「あの兄弟子は無駄に声が大きくて、人の話を聞かないところがあるから、助けてもらうどころか、存在に気づいてもらえないのでは、と思った」
ハンナの手が小刻みに震える。
「あなたはあきらめてしまったのよ。肩がぶつかって謝った言葉が届かなくて、自分のこの小さな声では兄弟子に聞こえるわけがないと。そうなのでしょう?」
大粒の涙がハンナの目からあふれた。
「…はい。そんな自分が情けなくて…」
泣いていた理由はそれ。
「ねぇハンナ。あなたがわたしに弟子入り志願したのは、その小さな声と内気な性格をなんとかしたいから、だったわよね?」
「…はい」
ミランダは、握ったままのハンナの手をそっと撫でる。
「でもね、『魔法使いになりたいんです!』と言った時の声、普通の大きさだったわよ?」
「……え?」
「1年近く見てきて思ったのだけど、声を出す時に、無意識に声量を抑えているのではないかしら?」
「…無意識に、ですか」
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