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師匠ミランダは、窓を開けた仕事部屋から弟子の様子を見ている。
その手にあるのは、ハンナが“復元”した例のティーカップ。
ハンナは小さく呟いた。
「…先生、今回も気づいてないみたいね」
そんな弟子をチラリと見ながら紅茶を飲むミランダも、こっそり呟いた。
「甘いわ。このわたしが気づかないわけがないじゃない。きれいに復元しても、わずかに残留する魔力はわたしにはわかるのだから」
ため息をついたミランダは、カップを置いて立ち上がると弟子に向けて声を上げた。
「まだまだ甘いわ! もっと集中して!」
「はい、先生!」
はっきりとした返事をするハンナに、満足げに微笑むミランダ。
ハンナが師匠の隠し事―弟子をこっそり魔法薬の実験台にしていたこと―を知るのはまだ少し先のことである。
〈終〉
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