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固く絞った雑巾で机を拭き始めた時、そこにあった1本の瓶に目が留まった。
開けた窓から差し込む日の光が当たり、中の塩の結晶のような純白の粉がキラキラ輝いていたのだ。
「…きれい……。試作していた新しい魔法薬ってこれかな?」
しげしげと眺めていたハンナだったが、その瓶の陰にティーカップがあるのを見つけた。
「…これも洗わないと」
ティーカップを持って、台所に行こうと体の向きを変えた瞬間、ハンナはイスの脚につまずいた。
「わっ!」
体を支えようと咄嗟に机に手をつこうとしたものの、何かに手がぶつかり、勢いのまま転んでしまった。
―パリンッ! ゴトンッ!
床にうつ伏せになった彼女の頭に、さらに何か硬い物がゴツンと当たって転がる。
「…痛い~」
体を起こしたハンナの目の前には、砕けたティーカップのかけらが散らばっていた。
「…また割っちゃった」
ハンナはため息をひとつつくと、慣れた手つきでかけらを拾い集めて一ヶ所にまとめていく。
そして、集めたかけらの山に両手をかざした。
「…《復元》」
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