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彼女の両手から光の粒子が洩れ出す。粒子はかけらの山を包み込み、一つになって、両手の中に収まるほどの光の塊になった。
そしてハンナが慎重に手を離すと、光の塊は霧散し、そこに現れたのは、元の形を取り戻したティーカップが一つ。
ハンナはカップを隅々まで確かめる。小さな欠けはおろか、ヒビひとつない。
「…よし、うまくできた」
ふぅっ、と安堵の息を吐き出したハンナは、立ち上がろうと床に手をついたところで、おかしな感覚に気づいた。
初めは目の錯覚かと思った。遠近感が変な気がして、床に置いた手を動かしてみた途端、思わずゾッとした。
「…見えない?」
いや、床はちゃんと見えている。立ち上がって周りを見回してみるが、やはり見える。
「…見えないのは手?」
しかしそれも違った。床に立っているはずの足、腰、腹、胸、肩と確かめてみたが、どれも見えない。
「…わたし、消えちゃったの?」
自分の言葉に動揺したその時、靴に何かが当たったのを感じた。
見下ろすと、コロコロと転がりながらキラキラと光を反射しているあれは――。
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