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「…さっきの瓶の栓だ」
拾おうと腰を曲げたハンナだったが、距離感がわからなくて指が空を切ってしまった。
そこで膝を曲げて距離を縮めてみたものの、今度は床に指をぶつけてしまう始末。
仕方がないので床にひざまづき、ついた膝から床をたどって栓をようやくつかむことができた。
透明な手でつかんだ栓は、手をひねってみると空中でコロコロと転がっているようにしか見えない。
そのキラキラとしたガラスの栓を見つめながら、ハンナは少し安堵していた。
物をつかむことはできるし、自分の体もさわれるということは、体が無くなったのではなく、“見えなくなった”だけ。
ハンナは瓶が置かれていた机に目を向けた。瓶は倒れて栓が外れ、中身がほとんど無くなっている。
転んだ位置を考えると、どうやら魔法薬を頭からかぶってしまったようだ。
「…原因はこれだよね。まさか透明になる魔法薬を作っていたなんて」
ハンナは部屋にあった鏡の前に立ってみた。
確かに正面にいるのに、まったく映らない。彼女の後方の壁が映っているだけだ。
「…でも、どうしよう」
ハンナは、魔法薬についてミランダから習ったことを思い出していた。
気をつけなければならないのは、放っておくと命の危険が伴う場合があること。
失敗作ならなおさら、どんな副作用があるかわからないので、なるべく早く対処したほうが良い。
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