魔法使いのかくしごと

8/14
前へ
/14ページ
次へ
 “解除”の魔法はあるが難易度が高く、ハンナでは到底無理だ。  「…何か考えなきゃ。――そうだ!」  掃除を始める前に引き出しにしまった調合メモを思い出した。  だが、取り出して見てみるも、記号やら数字だらけでさっぱりわからない。  「…これじゃダメだ」  う~ん、と唸りながら考え込む。  ハンナが使える魔法は4つのみ。 “復元”と“縮小”は意味がない。“火花”は危ないだけ。“つむじ風”は――。  「…いけるかも!」  ハンナは急いで庭へ出た。  窓から距離をとって、一つ深呼吸。  そして、前方へ向かって片手を振り上げながら魔法を放つ。  「…《つむじ風》!」  目の前に、彼女の身長ほどの小さな竜巻が現れた。  つむじ風は、雑草や砂を巻き上げながら、なかなかの速度で回転している。   「………………」  唇をぐっと噛み締め、両手で耳を覆い、まぶたをぎゅっと閉じたハンナは、自分が出したつむじ風の中に飛び込んだ!  風と砂がバチバチと肌に当たり、痛みに耐えながら、体が浮かないように踏ん張る。  「ん~~~~!」  頭からかぶってしまった魔法薬を、風で吹き飛ばしてしまおうと考えたのだが……。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加