0人が本棚に入れています
本棚に追加
十数秒ほどでつむじ風は消えた。ハンナの実力ではこれがせいぜい。
さっそく、家の窓ガラスに近寄ってみたが、人の姿は映らない。
ミランダの仕事部屋に戻って、鏡を覗き込んでみても、自分の姿は映らなかった。
「…これくらいの魔法じゃあ効果ないよね。失敗作とはいえ先生の作った魔法薬だもの」
ハンナはブツブツ呟きながら、部屋の中を行ったり来たりし始めていた。
「…先生がお昼まで戻らないということは、材料集めに遠くまで行ったか、あちこち行っているのか……。ウ~ン、どちらにしろ、どこにいるのかわからないから連絡しようがない! あ~、助けて誰か~」
そう喚いた彼女は、不意にピタリと足を止めた。
「…あの人なら“解除”が使える……!」
ミランダの家を出たハンナは、街中を急ぎ足で進んでいた。
「…あの人――先生の兄弟子さんに助けてもらおう」
ハンナの呟きは続く。
「…何て言って説明すればいいのかな? えっと、試作の魔法薬で透明になってしまって、ミランダ先生がいないから元に戻す方法がわからなくて、――あぁ、調合メモを持ってくれば良かったかも! でも、あれは――」
最初のコメントを投稿しよう!