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それならいいかと、授業を受けるため俺も前を向こうとしたが、その前に勢いよく会長がこちらへ向いた。
「……あの、直江。その……」
さっきまでこちらを見てくれなかったのが嘘のように、今までで1番強い眼差しに佇まいを直した。
「……新歓の日、生徒会室に来たとあとから聞いた」
「うん」
「ブレザーを掛けてくれたのは、直江……だったのか?」
そういえばそんなこともあったなと思い出した。
特別なことじゃないので言われるまで忘れていたが、確かあの日寝ている会長にブレザーを掛けた覚えはある。
そしてあることも思い出した。
「俺だな」
「……ありがとう。それをずっと言いたかった」
「そういえば俺も言いたいことがあった……会長さぁ、忙しい時はちゃんと休んでくれよ。新歓の時隈を化粧で隠すんじゃなくて、しっかり寝て直すとかしないと身体壊すよ。食事もちゃんと摂って無かったみたいだし……」
「ああ、……あの時は直江が居たから頑張れた」
俺は何もしていないと反論したかったが、顔を綻ばせる会長に何も言えなくなった。
ここでちゃんと言わないと、また同じことを繰り返すかもしれない。
そう思っても、何も言えなかった。
「あと……クッキー美味かった。2回も作ってもらって申し訳ない」
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