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ーーーー 昔から特別扱いばかり受けてきた。 それが嫌だと思い始めたのはいつからだったろうか。 もしかしたら小学校高学年の時に、『東雲くんって本当に人間なの?』と聞かれたことがキッカケだったのかもしれない。 だけどその事だけに限らず、今までにも家柄や容姿が理由で、他人から一線を引かれてきた。 みんな俺の中身は見ずに、一部だけを見て、『家柄から容姿まで、全てが完璧な生徒会長様』というイメージを作り出した。 だけどそれはただのイメージってだけで、俺自身は『学校に行きたくない』『遊びたい』『恋人がほしい』なんていう願望を持つ、至って普通の男子高校生。 今更本当の俺を見て欲しいなんて幼稚なことは言わないが、できるなら特別扱いはやめてほしい。 俺だって他の奴等と何ら変わりないんだ。 そんな思いがずっとあったから、 始業式後の教室で『お疲れ様。会長でも噛むし筆箱忘れるんだな。なんか遠い存在かと勝手に思ってたけど、親近感わいたよ』と直江に言われた時、俺は嬉しくて舞い上がった。 そうなんだ。そうなんだよ。 俺だって噛むし、筆箱忘れるし、そこら辺にいる奴等と全く一緒なんだ。 直ぐに直江は前へ向き直ってしまったが、俺の頭の中ではしばらく、「親近感がわいた」という言葉がエコーした。 キッカケはほんの些細なことで、俺へ言った言葉を、もしかしたら直江は覚えてないかもしれない。 それでも俺は、数週間前のその時のことを、今でも鮮明に思い出せる。 黒髪黒目で特質したものはないが、周りに流されることもなく自分の見たままを告げ、話す時にはしっかり相手の目を見る直江は、とても綺麗だった。 こんな簡単なことで、と自分でも思うが、「親近感がわいた」なんて言ってくれたのは直江だけだった。 俺が直江を好きになるキッカケとして十分過ぎる程だ。
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