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薄く目を開けるとボンヤリとした景色が見えた。
どこだここはと思考を巡らせ、やっと『ああ生徒会室か』と思い出した。
去年に引き続き、今年も会長職を担うため、2回目になる新入生歓迎会の仕事は滞りなく進んだ。
何かイベントがあると通常業務と重なり、忙しくて嫌になるが、今回の新歓は何をしていても楽しかった。
『この書類が終わったら直江に会いに行こう……』
『どんな新歓だったら直江に楽しんでもらえるだろう……』
と、直江のことを考えるだけで、去年1年間の苦労が嘘のように、仕事が捗った。
それに仕事が終わらず嫌になっても、疲れて何もやる気がわかなくなっても、一目直江の姿を見るだけで、俺はやる気に満ち溢れた。
楽しそうに友達と話し、たまに浮かべる、目尻を下げた人好きのする笑顔は、どんな状態でも俺を笑顔にした。
欲を出せば俺へとその笑顔を向けて欲しく、直江の笑顔を俺が作りたい。
だけど生徒会の仕事のせいで、始業式以降教室に行けていない今は、直江との関係はただの同じクラスの生徒同士。
始業式からもう2週間程経つが、今だに仲良くなるキッカケもなく、ただ遠くから直江を見ているしかない。
何度か俺に気付いた直江が声をかけてきてくれたことはあるが、直江を目の前にするといつもの自分を保てないほど動揺してしまい、声をかけられるたびに俺は逃げてしまう。
そして全力で走ったせいだけでない胸の高鳴りに、自分が如何に直江を好きかを自覚させられた。
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