4

9/9

1503人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
教室の扉を前にして、かつてないほどの緊張で胸が高鳴る。 ドクッドクッと1回1回うるさいほど鳴る心臓は、いつまで経っても収まることはなく、手の平も気が付けば汗が滲み始めた。 いつもはあれだけ嫌という程感じる視線も、今日は気にならないほど今の俺には余裕がない。 大きく息を吸って、吐いて 何回も深呼吸を繰り返し、ようやく覚悟を決めて勢いよく扉を開けると、真っ先に直江の姿が目に入ってきた。 「会長、おはよう」 「……はよ」 ちょうどこちらを向いた直江は俺と目が合うとニコッと笑い、何気ない挨拶をしてくれた。 その挨拶を俺はどれほど待ちわびてきたか、何度空想の中で直江と挨拶を交わしてきたか ニコッと笑う直江の背後には花が舞い、俺の目を奪った。 あれほどシミュレーションをしてきたというのに、本物の直江を前にすると俺は上手く挨拶が出来ない。 やっぱり空想の中の直江よりも、現実の直江の方が何倍もいい。 何気ない挨拶が出来る幸せをゆっくりと噛み締めた。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1503人が本棚に入れています
本棚に追加