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そんな忙しいはずの会長が俺みたいな平凡をわざわざストーカーしに来るなんて、『会長は仕事をサボってるのか?』と最初は疑問に思ったが、そういう訳ではないらしい。 始業式の翌日から会長は授業には出ず、毎日生徒会室で仕事をしている。 会長とは同じクラスだから授業に出ていないことは知っていたが、学食でたまたま近い席に座った副会長が「毎日毎日全員で仕事してるのに終わらないって、どういうことですか!」とボヤいてたから、きっと嫌になるほど仕事をしているんだろう。 それに会長の目撃情報自体、あまり聞かない。 2年の時は『学食で会長様見ちゃったぁ』『さっき会長が廊下歩いてたけど、相変わらずオーラあるよな』と会長の目撃情報は四方八方飛び交っていたというのに、今は『会長が誰かを追い掛けてる』という話しか聞かない。 ということは、会長は寮への行き帰りと俺をストーカーしている時しか、外に出てないのかもしれない。 会長にバレない程度に、視線を3本離れた桜の木に移した。 ただこちらをジッと見つめるだけの会長の目の下には、真っ黒いデカい隈が飼いならされている。 「会長大丈夫かな……?」 「生徒会の会計から聞いた話だけど、会長全然寝てないし食ってもないんだってさ」 既に会長から視線を外した花守は、そう言って焼きそばパンにかぶりついた。 言われてみれば、日に日にやせ細り、前よりもげっそりした気がする。 俺なんかをストーカーする時間があるなら、その時間を食事や睡眠に回して欲しい。 どうやら俺以外の奴等もそう思っているらしく、桜の木に隠れている会長に 「食事を取った方が……」と話し掛ける声が聞こえた。 けれど会長は「いや、気にしないでくれ」と全く聞く耳を持たない。
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