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それからというもの、僕は、毎週木曜日が楽しみ過ぎて仕方なくなっていた。
いつも授業開始の30分前には、教室に行き、彼女の隣に座った。
彼女は、もちろん誰より先に教室のいつもの席に座っている。
分厚い参考書を片手に、テキストに沢山メモを書き込んでいた。授業で、高橋教授から質問された時に、すぐに答えられるようにだ。
まだ、いつも彼女は準備を欠かさなかった。
そんな彼女に影響され、僕も授業の予習を欠かさなくなっていた。
そして、2ヶ月が経った。
まだ、一緒に授業の予習をする、予習仲間と言う関係は、変わっていなかった。
僕は痺れを切らしていた。
今週こそは、連絡先を聞き出そう。
僕は意を決して、教室に乗り込んだ。
彼女は、そこにいる事が当たり前のような顔で、教室の一番前の右端に座っている。
「白石さん。今日も一番乗りだ。」
「あなたが遅いのよ。さあ、予習を始めましょう。」
「ああ。いつも真面目で頭が上がらないな。本当に、偉い。」
僕は、彼女の隣に座った。
僕は、彼女の様子を横目で見ながら、機会を伺っていた。
「今日は、どんな講義内容かな?」
「あら、最近は、ずっとケングリムウッドじゃない。私この作者の作品が、最近お気に入りなのよね。」
彼女は、英語のテキストに和訳を書き込んでいる。
僕は、彼女のテキストを取り上げた。
「授業も良いけど、僕は君についてもっと知りたいんだ。」
彼女は、じっと僕を見つめた。僕はその目に話しかける。
「もっと君の事を教えてくれないか?」
彼女は、少し考えた後呟いた。
「例えば、私の何が知りたいの?」
「君の連絡先。」
彼女はクスクスと笑う。
「私、携帯電話持ってないんだ。」
嘘だ。
「じゃあ。家の電話番号。」
僕は、食い下がる。
「家は、お母さんがいるから駄目だよ?」
彼女はいたずらっぽくおどけた
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