初恋

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僕のもどかしい日々は、その後も続いた。 季節は、秋になり、授業のカリキュラムも半分を終えようとしていた。 僕達は、未だに連絡先も交換していない、教室だけの関係ではあった。 そんな中、徐々に、お互いのプライベートについて打ち明けあっていた。 そこで分かったのが、彼女は、元はここの大学の学生だったという事だ。 何かの理由(余り深くは聞かせてもらえなかった。)で、志半ばで大学を中退してしまったのだと言う。 しかし、中退してからもこの講義だけは、欠かさず3年間受け続けてきたらしい。 普通、講義は1年間単位のカリキュラムなので、彼女は、同じ内容の講義を3回も受けていた事になる。 彼女が言うには同じ授業内容でも毎年新しい発見があるという。 去年は、分からなかった、ケングリムウッドの作品の良さが分かるようになったんだと彼女ははにかんだ。 ただ、僕は気付いていた。彼女は、授業内容に興味があるのでは無い。 彼女は、高橋教授に恋をしているのだ。
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