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それから、僕たちは、お互いを健ちゃん、真夏と呼び合うようになった。
彼女の気持ちが、教授から、僕へと少しづつ変わっていくのを感じた。
ある日、僕はふと彼女の好きなタイプの男性を聞いてみた。
「私の好きなタイプは、命を賭けられる人。」
彼女ははっきりとそう答えた。
「命を賭けられる?真夏、一体どういう事だ?」
「例えばね、沢山の車が走っている道の中央に、車に轢かれて死んでしまった子猫がいたら健ちゃんどうする?」
「うーん、僕は、可哀想だけど、見過ごしてしまうかも。」
「駄目!それじゃあ、私健ちゃんの事、好きになれないよ。危険を侵しても、道の中央に走っていって、止まって下さい、子猫ちゃんがいるんです!ってやってくれる人じゃないと、私嫌!」
僕は、そう言われて、今まで何匹の子猫たちを見過ごしてしまったんだろうと考えていた。
「真夏。分かった。これからは、そうするよ。止まって下さい、猫がいるんです!ってね。」
僕は、彼女を落ち着かせるように答えた。
「ありがとう。そしたら健ちゃんの事、少しは見直すかな。」
僕は彼女のはにかんだ笑顔の中に、何故か悲哀のようなものが溶けているのを感じていた。
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