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それから、すぐに事件は起きた。
高橋教授が、大学から解雇されたのだ。
表向きは、体調の悪化による自主退学となっていたが、実際には、高橋教授は奥さんがいたにも関わらず、大学の女子学生と不倫し、子供が出来たのだという。奥さんから、訴えられた教授は、大学から、事態が大きくなる前に解雇されたのだという。
当然カリキュラムは、途中で頓挫してしまった。
大学側は、生徒からの不満を防ぐ為に、これまで授業に参加していた生徒全員に、特例として単位取得を認める措置を取った。
でも、僕は、単位なんかいらない。
彼女との接点が無くなってしまった事に呆然としていた。
彼女の連絡先も、未だに教えてもらっていなかったのに。
僕は、心に大きな穴がぽっかりと空いたまま、木曜日を迎えた。
4限目の授業が始まる30分前になり、もしかしたら、彼女が事情を知らずに教室にいるかも知れないと言う淡い期待を胸に、教室へ向かった。
不安に駆られながら教室の前に着くと、ドア越しに、中の電灯が消えている事に気付く。
やはり、来ていないのか…。僕は、祈るような気持ちで、ドアを開けた。
すると、彼女はいつもの席に座っていた。それがさも当たり前であるかのように。
しかし、彼女の様子はいつもと違った。
薄暗い教室の中、彼女は大粒の涙を流していた。
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