0人が本棚に入れています
本棚に追加
「寒いねぇ~。」
はーっ。と、彼女が息を手に吐いた。
白い吐息が、ふわりと流れていく。
「ほら。」
俺が手を差し出すと、
彼女は嬉しそうに笑った。
そして、俺が差し出した方の手袋を外すと
自分も片っぽ手袋を外して、
握った手ごと、俺のコートのポケットに突っ込んだ。
「こっちの方が実はあったかい…」
頬をほんのり色づかせて、
少し恥ずかしそうに微笑みながら
ぐるぐる巻きのマフラーに口元をうずめる彼女が、なんだかやたら可愛かった。
「肉まんでも買いに行くか。」
「さんせーーーいっ!」
歩き慣れたはずの、いつもの道。
雪に足を取られて転びそうになっては
2人で大笑いした。
君が傍にいてくれるから
少しも寒くはなかった。
明日になって雪が溶けて
じきに寒い冬が終わっても
ずっと俺の手を握って
隣で君は、笑っていてくれると思っていた。
最初のコメントを投稿しよう!