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12月に入ったばかりの頃のこと。 「正月は、実家で過ごせよ。 俺も帰省するけどさ。」 夕飯の食器を洗うユキを後ろから抱きしめてそう言った俺に 「?」な表情をして振り返ったユキ。 「・・・倉田 雪として実家で過ごせる、最後の正月になるからさ。」 「え・・・?どういう意味?」 「来年の正月は、井川 雪になってるだろ。  正確には・・・1月25日から、井川 雪になるんだから。」 1月25日は、ユキの誕生日。 その日に婚姻届を出して、結婚記念日にしたいと思っていた。 半纏のポケットから、 リングケースを取り出すと、 ユキの目にみるみる涙が溜まった。 「俺の、お嫁さんになってください。」 「・・・」 言葉にならずに、 ポロポロと零れ落ちる涙を拭いながら、 ユキは何度も頷く。 「ユキ。返事、は?」 「お嫁さんに、してください・・・」 「よし。俺のお嫁さんにしてやろう。  任せとけ。俺だぞ。  幸せになれないわけがない。」 「んもぅ。上からっ!」 泣き笑いするユキの涙を指で拭って、 何度も何度も、くちびるを重ねた。
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