第二回【Mの視】

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待ち合わせは十一時。 駅裏の公園のベンチに着いたのが十時四十分。 どこかお店に入っててもらって良いですよ、と言ってた。 あれがもう遅れること前提ということなんだろうか。 いつもそんなふうにしてるのかな、彼女は。 すぐにランチに出るだろうから店に入るのも気がひけて。コンビニのコーヒーを手にしている。 春めいてきたとはいえ手先は冷える。温もりはすぐに冷めるだろう。 朝は苦手だろうから遅めに約束したけれど。 自分だって朝から張り切って出かけるなんてがらじゃない。 ような気がする。 デートなんて久しぶり過ぎて、どうだったか思い出せない。 ドタキャンの可能性もある。 背もたれに首まで預け見上げれば。 「あ」 飛行機雲、だ。 体をねじって行方を見れば、 「おはよーございます」 ベージュのコートの襟に、毛先を揺らして。 彼女が頭を下げた。 「ホントに来たんだ」 「なんですか、それ」 だって、酒の席で。 上司のデートの思い出話につられて 冗談のように軽く誘ったら。 『いつか』が具体的な日にちに化けて 約束となっていた。 キャバ嬢と。 何やってんだオレ。
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