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待ち合わせは十一時。
駅裏の公園のベンチに着いたのが十時四十分。
どこかお店に入っててもらって良いですよ、と言ってた。
あれがもう遅れること前提ということなんだろうか。
いつもそんなふうにしてるのかな、彼女は。
すぐにランチに出るだろうから店に入るのも気がひけて。コンビニのコーヒーを手にしている。
春めいてきたとはいえ手先は冷える。温もりはすぐに冷めるだろう。
朝は苦手だろうから遅めに約束したけれど。
自分だって朝から張り切って出かけるなんてがらじゃない。
ような気がする。
デートなんて久しぶり過ぎて、どうだったか思い出せない。
ドタキャンの可能性もある。
背もたれに首まで預け見上げれば。
「あ」
飛行機雲、だ。
体をねじって行方を見れば、
「おはよーございます」
ベージュのコートの襟に、毛先を揺らして。
彼女が頭を下げた。
「ホントに来たんだ」
「なんですか、それ」
だって、酒の席で。
上司のデートの思い出話につられて
冗談のように軽く誘ったら。
『いつか』が具体的な日にちに化けて
約束となっていた。
キャバ嬢と。
何やってんだオレ。
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