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約束通り水族館に向かう。
空いたバスに、並んで座った。
彼女はスマホをいじり始めたので、景色を見るふりをする。
上司が水族館デートってどうなの、と話題を振ったのが発端だった。
「高校生の時に行ったことありますよ」
「マジで?お前そういうキャラだっけ。で、彼女と喋った?」
「いや、喋んなかったっすね」
「だろ?口説く奴連れていくのには地味だよな」
あの人、若い頃はもっと派手に遊んでいただろうからデートはイベントじゃないと駄目だって思っているんだろうな。
「タナカさん、どうしましょう」
彼女の声に、視線を戻す。
ケースも指先もキラキラしている。
「一時からイルカのショーで、ウミガメの餌が一時半です。どちらかは見たいんです。
ペンギンは今日はないみたい」
「ミユちゃんの好きなふうに回ろう。僕はどちらでも良いよ」
言ってから、やけにおじさんぽく聞こえたんじゃないかとへこんだ。
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