第三回【Cの溶】

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飯田ますみが働いていたのは、新進気鋭の陶芸家、倉橋 アユムの屋敷、兼アトリエだ。 「確かに、あの女の人はよく来られていました。 でも、二年も前です。先生と……その、なにかあった人は他にもいらっしゃるのですが」 テーブルの上の数枚の写真に視線を落とす。 「一時期の関係で、ぱったり来られなくなって……それから、知らせを聞いてびっくりするようなことで。」 三人の女性が、倉橋のモデルとなったあとに死を遂げている。 しかし、作品が発表されてから二年以上たっている。 今回、アトリエの外で遺体が見つかったので、過去の二件も含めて検証することになったわけだが。 倉橋家は名士を輩出している家柄だ。倉橋アユムは親の代から東京に出たので地元出身ではない。 余所者を嫌う土地柄で、風変わりな芸術家。 にもかかわらず、倉橋の名前が免罪符のように、彼の評価を守っている。 ふらっときた刑事に話してくれるわけがない。 実際、付近の住人との関係も良好なのだろう。
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