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『
在る
有る
或る
……ある女、その存在は私にとっての理想であり永遠のテーマだと言えます』
代表作「ある女」シリーズについて、倉橋アユムがそう語っている。
個展のパンフレットには、女体の一部分をモチーフにした作品が載せられている。
しなやかな指
悪戯なくるぶし
清廉な鎖骨
溶解する乳房
切り取られた一部分が釉薬に溺れ快楽を咲かすように
作品群は
そこにあった。
その圧倒的な美と、モデルの人生は真逆だった
作家との蜜月は贅沢で研磨するようなもので、元の暮らしを毛羽立たせてしまうそうだ。
死んだ三人以外の女性も平穏な幸せとは遠かった。
「先生は女の人のきれいなところを吸いとってしまうような、土をさわっている時は恐ろしいんですけど……その他はとても優しいです」
飯田ますみは、そう言ってにっこり笑った。髪を耳にかけたときに肘の内側に黒子が見えた。
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