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また、この店にやって来た。
扇風機がかき混ぜるのは、記憶。
注文のついでに倉橋アユムという陶芸家を知っているか訊いた。
前にいた老婆よりは愛想がある。
「あの人は」
アイスコーヒーが置かれる。
シワだらけの顔を見たが表情が読めない。
グラスに水滴が滑る。
頼んでもないミルクとシロップ。
「酷いのです。何もかも奪いました」
扇風機が、角度を変える度にギチギチ軋む。
ギチ
ギチッ
「何もかも……」
肘に、
黒子があった
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