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王宮に知らせが届いたのは、朝露も乾かぬ頃である。
大陸の中央に位置する大国エストカ。
王宮の回廊を緊急召集に応じた臣下達が駆ける。
まだ表向きの仕事をする者が出仕していないので、内働きの侍従が気を利かせて動く。
これからの会議は、長いのだから……
「本当なのか、竜伯が降りたったというのは……!!」
王座のひじ掛けを握る手も震えている。
大臣や王は青ざめているが、若い者はピンとこないようだ。
「あの、竜伯というのは……実在するのですか。その、男女の見境なくアレというのは本当に?」
「それは誇張されている。竜族は神として崇められて、嫁探しの一時期を除いては温厚だ」
竜伯というのは東方の竜族の長である。各国の協定で、竜伯の気に入った娘を差し出すことになっている。
でないと、国土が焦土に変わるからだ。
竜族の寿命は長く 五十年に一度ほどの確率なのだが……娘を持つ親にとっては酷である。
「とにかく令嬢は屋敷から出さぬように。……そろそろ王太子妃の候補を絞ろうと思っていたのに時期の悪い……まあ、たまたま休息に降りられただけで、我が国で乙女を拐うと限ったわけでは……しばらくしてお帰りくださるやも……」
そのとき、西の城壁のあたりに衝撃が
「申し上げます!!黒い竜が城壁をは、破壊っ」
「なんで城にいきなり!?ウチ王女もいないのに」
「うちの王子、見目だけは良いからまさか間違えられて拐われたりして」
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