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その頃、王子の室の前では眼鏡の有能侍従が作り笑顔で応対していた。
「ベル様、とても伯爵令嬢と思えません。馬車に隠れて登城して夜這いとは」
「相変わらず無礼ね、ジーク。この緊急事態に殿下をお慰めしたいと取るものもとりあえず駆けつけた女心がわからなくて?」
「……胸の底上げとメイクする時間はあったのですね」
絶賛居留守中の王子としては、ジークだけが頼りである。
暴言に腹を立てて去ってくれとひたすら祈る。
押し掛けた理由に声をあげそうになった。
「だって、竜族との夜のあれこれが、すごいんですもの。拘束して昼夜を問わず、体格や習慣の違いを乗り越えて強引に、もう人間の女性はボロボロにされるとか。鱗が剣のように尖っているんですって。
それなら多少窮屈でも王太子妃の方がマシですわ!
この国で美しい女性と言えば私でしょ。もう、怖くて怖くて……」
ドアに擦り寄る気配。
「そこ自分で言いますか。鍵穴にピン刺さないでくださいね」
「チッ」
(舌打ちした!やっぱあんなのと結婚するのヤダ)
ジークとの嫌味の応酬を裂いたのはベル嬢の悲鳴。
「ジークさすがに女性に酷いことは」
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