第一回【Gの密】

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僕らの住む十三階層から、三七階層までは難なく行けるはずだった だんだんと重力が少なくなるように調節されている その階層の住人は袋のような、ちゃぷんちゃぷんと揺れる液体の入った靴を履いていて、地面から少しだけ浮かんでいる 背中の舵で方向を変える すいすいと進む通行人の中に、自分の姿では紛れ込めないと悟った 扉を閉めて自分の世界に戻ろうとした時に。 僕は、上から落ちてくる君を見つけた ヒラヒラと袖とスカートが彗星の尾のようだった 君は、七十二階層から逃げてきたと言った それが本当だと思ったのは、とても細い足と赤ん坊のように柔らかい足の裏を舌でなぞったから。
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